水のPH値とは?
水は無色透明ですが、実際には目には見えないさまざまな物質が溶け込んでいます。
PH値とは、水に溶け込んでいる水素イオンの濃度を示す数値のことで、その数値の度合いによって酸性・中性・アルカリ性を知ることができます。
PH値は0から14まであり、PH値の数字が小さいほど酸性に、大きいほどアルカリ性になります。数値が0から7までを「酸性」、ぴったり7であれば「中性」、7より高いものを「アルカリ性」と定められています。PH値は飲料水を分類する基準の一つでもあります。
水道水のPH値について
日本の水道水の基準は、世界の国々と比べても非常に厳しいと言われています。
厚生労働省では水道水に関して51の水質基準項目と基準値を設けていますが、PH値は51項目ある基準のうちの一つで、水道水にとっては重要な指標とされています。
これによると、水道水のPH値は「5.8以上8.6以下」であることが定められ、平均するとおおむね中性に近くなっています。
水道水のPH値が定められていることで、飲料水の品質安定のほか、PH値の数値の変動によって水源となる水の汚染を察知したり、水道施設に対する腐食性の判定として使ったり、浄水場における薬品注入量の決定などに役立てられています。
PH値による味の変化について
PH値のちがいによって「水」の味わいに変化があるのかどうか、気になる方もいることでしょう。一般的に、酸性のものは「酸っぱく」、アルカリ性のものは「苦く」味を感じやすいものです。
しかし水に関しては、酸性だから酸っぱく感じたり、またアルカリ性だから苦く感じたりなど、水そのものへのPH値による味の影響はないとされています。
というのも、日本の水道水に関する安全基準では「PH値が5.8~8.6以内」と明確に決められているため、中性~弱アルカリ性で安定しているからでもあります。
そこで、アルカリイオン整水器を使った水であったとしても、PH値を計測すると9~10程度で、味への影響を感じる人はほとんどいないとされています。
私たちが水を飲んだときに感じる、ある種の「味わい」や「風味」といったものは、水に含まれているカルシウムやマグネシウムなどのミネラル由来によるものということになります。
水は人間のPH値に近い方が吸収されやすいは本当か?
人間の体液のPH値は7.3~7.4であることから、巷では「人間のPH値に近い水の方が体内吸収されやすい」「人間の体液と同じPH値の水の方が、からだに優しく健康に良い」として、健康意識の高い女優やモデルの間で広まっているようです。
実際にはどうなのか、知りたい人も多いことでしょう。
実は「水の吸収力」と「PH値」は特に関連していないことがわかっています。
上述した通り、PH値とは水素イオンの濃度を示すもので、からだへの吸収力を示す数値ではありません。
元々、人間には体内でPH値をちょうど良いバランスに調節する機能が備わっています。そのため、飲んだ水がからだに吸収されても、そのPH値が体内に直接的に影響することはありません。もちろんPH値が0に近い強酸性のものや、14に近い強アルカリ性のものは有害なので飲料することはできませんが、酸性に数値が傾いているオレンジジュース、ワイン、炭酸水を飲んだとしても体内の体液が酸性になることはないのです。
体液に近いPH値の水を飲んだとしても、体内で中性・酸性のものと混ざり合う
さらに、中性に近い体液に近いPH値の水を飲んだとしても、口内ではPH値6.8~7.0(中性)の唾液と混ざり、食道を通過して胃にたどりつくと今度はPH値1.5程度(強酸性)の胃酸とも混ざり合うことになります。その後、小腸などで吸収されていく過程でPH値は調節されていくので、このことから体液に近いPH値の水を飲んだとしても体内にとってはあまり関係のないこととなります。
「体内に吸収されやすい」というキャッチフレーズを見かけたとしても、実際にはそうではないこと、人間のからだには調節機能があることを知っていただきたいと思います。
水については時々科学的なエビデンスのない情報も見られることがありますが、過度に惑わされずに、ご自身が良いと思うものや用途に合うものを冷静に選びましょう。