知っておきたい!水の用語集

トリクロロエチレンとは?発がん性や毒性、除去方法などを解説

更新日 : 2021.02.01

トリクロロエチレンとは?

トリクロロエチレンとは有機塩素化合物の一種です。脂肪を浮かす効果があるため、ドライクリーニングや半導体製造の洗浄剤として1980年代ごろまでは利用されていました。しかし、後述する発がん性が判明したため、現在ではほとんど使われなくなっています。

常温では無色透明の液体で、クロロホルムに似た甘い匂いがします。揮発性ですが火を近づけても燃えません。そして水に溶けにくいです。

環境中に排出されても安定しており、なかなか分解しないため地下水まで浸透して汚染の原因になります。したがって、水質汚濁防止法、大気汚染防止法、化学物質審査規制法によって規制されています。

トリクロロエチレンの毒性

トリクロロエチレンは発がん性があることで知られています。国際がん研究機関(IARC)ではトリクロロエチレンの発がん分類を「グループ1:ヒトに対して発がん性がある」に分類しています。2014年にグループ2A:「ヒトに対しておそらく発がん性がある」から昇格しており、「発がん性がある」と断言しているので、毒性がはっきり分かっている物質だと思って良いでしょう。

トリクロロエチレンに晒された人ががんになりやすいのかどうかについて、80種以上の論文をレビューした科学者がいます(Wartenberg)このレビューによると、トリクロロエチレンを摂取すると腎臓がん、肝臓がん、悪性リンパ腫になりやすくなる傾向があるそうです。その他にもトリクロロエチレンとヒトのがんとの関連を示唆する研究がいくつか存在します。トリクロロエチレンで汚染された水を飲むのは避けたほうが良いでしょう。

【参考】食費安全委員会:清涼飲料水評価書(案)トリクロロエチレン
https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc4_kagaku_osen_tclethen_200925.pdf

トリクロロエチレンと水道水

トリクロロエチレンは毒性のある汚染物質なので、水道水に混入しないように水質基準によって規制されています。日本の水道水質基準ではトリクロロエチレンは1リットルあたり0.01mg以下と規定されており、2010年の審議により従来の1リットルあたり0.03mg以下より基準値が強化されました。厚生労働省が公表している資料「トリクロロエチレンの水質基準改正について」によると、2005年〜2007年の間に0.01mgを超えた事例が年に2〜3件発生していたことや、2008年に内閣府食品安全員会より厚生労働大臣あてにトリクロロエチレンの発がん性を指標とした場合のリスクが通知されたことが経緯となっているようです。

ただ、同資料によると基準値の10%以上の値を検出した水道事業体にアンケートを取ったところ、もしトリクロロエチレンが基準値を超えても取水地を他の水源に変更したり、特別な浄水設備を設置したりして基準の遵守が可能であるとの回答を全ての水道事業体から得たそうです。したがって水道事業体はトリクロロエチレンの対策をしっかり行っていると考えて良いでしょう。

【参考】トリクロロエチレンの水質基準改正について
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/suido/kentoukai/dl/kijun100712-a.pdf

トリクロロエチレンの除去方法

トリクロロエチレンについて水道水(上水道)はしっかりと対策されていますが、井戸水などの地下水には基準値以上含まれている可能性があります。しかし、トリクロロエチレンは家庭でも沸騰や浄水器によってかんたんに除去できます。沸騰で除去する場合はやかんや鍋に水を入れて10分以上沸騰させてください。短い時間ではトリクロロエチレンが除去できないので、ある程度長く沸騰させることが重要です。

浄水器で除去する場合はカートリッジに活性炭を利用している製品を選びましょう。パッケージに除去対象物質が書いてあるのでトリクロロエチレンに対応している製品を利用してください。また、浄水カートリッジの使用期限は守りましょう。使用期限を過ぎると浄水能力が落ちる場合があります。

沸騰や浄水器でトリクロロエチレンを除去した場合、消毒用の塩素も一緒に除去されてしまいます。雑菌が湧きやすくなるので早めに飲みきりましょう。

まとめ

トリクロロエチレンは国際がん研究機関(IARC)においてヒトに対する発がん性があると認められている物質です。水道水からも基準以上の値が検出された事例がありますが、もし検出されたとしても水源の変更や特別な浄水処理によって速やかに基準値以下に抑える体制が整っているので、そこまで心配はいりません。しかし、井戸水などの地下水には基準値以上に含まれている可能性がありますので注意が必要です。トリクロロエチレンは家庭でも沸騰や浄水器によって除去できますので、井戸水などの地下水を利用する場合は活用しましょう。

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