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溶解性鉛とは?化学的性質や毒性、水道水との関係について解説

更新日 : 2022.02.01

溶解性鉛とは?

溶解性鉛とは水に溶けた鉛のことです。鉛には鉛イオンとなって水に溶けているものと溶けていないものがあり、溶けているものを溶解性鉛と言います。鉛は非常に柔らかい金属で、加工しやすいため古来よりさまざまな製品に使われてきました。水道管もその1つです。しかし、鉛の有毒性などが明らかになるにつれて徐々に水道管には利用されなくなりました。現在では水道管には塩化ビニルやポリエチレンが使われています。

他の金属に比べて錆びやすく、すぐに黒っぽく変色してしまいます。単体では天然に多く存在する物質ではありません。その代わり硫化物(硫黄と金属等の化合物からなる鉱物)の鉱物として広く存在します。これらの鉱物を採掘し、焙焼と還元、精錬を経て純粋な鉛を取り出します。

溶解性鉛の毒性

鉛は毒性と人体への蓄積性が知られています。特に血液毒性、神経毒性、腎毒性、生殖発生毒性、発がん性があります。血液毒性とはヘモグロビンの破壊、つまり貧血です。鉛は造血組織に作用し、ヘモグロビンの数を減少させます。

神経毒性とは精神への影響です。鉛は中枢神経に作用し、人格の変化、注意力低下、錯乱、眠気、痙攣発作、昏睡、感覚の消失などを引き起こします。

腎毒性とは鉛によって腎臓が損傷することです。腎臓の機能が低下し、尿毒症などの原因となります。

生殖発生毒性とは早産や胎児の生育に影響が出ることです。この結果は一部の研究でしか認められていませんが鉛との関係性が示唆されています。

発がん性について、国際がん研究機関(IARC)は、鉛を「ヒトにおいて発がんの可能性のある物質」と分類しています。

このようにさまざまな毒性が確認されている物質なので摂取は避けた方が良いでしょう。

溶解性鉛と水道水

上記の通り、鉛は毒性がある物質なので水道水に混入しないように水質基準を設けて規制されています。日本の水道法では鉛の水質基準を1リットル当たり0.01mg以下と規定しています。健康に影響を及ぼさないレベルは0,05mg以下ですが、それよりもさらに厳しい基準で規制しているのです。この基準に適合しない限り水道水としては供給されませんので安全であると思われます。ただし、水道局が管理できるのは浄水場から住宅の水道メーターまでの管なので、古い住宅の場合はメーターから蛇口までに鉛が使われている給水管がそのまま残っている場合があります。したがって、古い住宅に住んでいる方はあまり水道水をそのまま飲まないほうが良いでしょう。

溶解性鉛の除去方法

溶解性鉛は家庭でも浄水器を使えば除去できますが、溶解性鉛に対応している製品と対応していない製品があります。たいていの製品にはパッケージに除去対象物質が書かれているので、対応している物を選びましょう。浄水器を利用する際はフィルターの交換時期を守ってください。フィルターを交換せずに使い続けると浄水効果が落ち、溶解性鉛を適切に除去できない可能性があります。

また、総トリハロメタンなどと異なり、鉛は沸騰では除去できません。鉛製の給水管を塩化ビニル製などに交換できないか検討すべきです。自治体によっては給水管からメーターまでの管を水道局の金銭負担で交換してくれる制度がありますので問い合わせてみましょう。

まとめ

鉛は加工しやすく、昔は水道管にも使われていましたが、人体にさまざまな毒性が発見されたことから、現在は使われなくなっています。厳しい水質基準により管理されているので混入の恐れは少ないです。しかし古い住宅の場合は一部に鉛製の給水管が残っている場合があります。そのような住宅に住んでいる場合は、給水管を塩化ビニル製などに交換するか浄水器を使用したほうが良いでしょう。

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