水銀の毒性について。摂取するとどうなる?日本の水銀対策は大丈夫?

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水銀とは?

水銀とは金属の一種です。かつて古いタイプの体温計や血圧計に使われたりしていたので名前を聞いたことのある人も多いと思います。常温・常圧で液体の形を取り、固体になる可能性が低い唯一の金属です。他にも常温・常圧で融けやすい金属はありますが、融点が20℃〜40℃のものばかりです。一方で水銀の融点はマイナス38℃です。したがって、我々が暮らしている環境の中で常に液体として存在する金属は水銀のみと言えるでしょう。

常温で液体であるという性質から古来よりさまざまな用途に使われてきました。工業では製品の材料として使われ、医療では医療機器の材料のほか、蛍光灯など日用品の材料としても利用されてきました。しかし、水銀の化合物の中には強い毒性のあるものがあり、環境への影響もあるので、近年では「水銀に関する水俣条約」や「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」によって水銀を使った製品の製造・輸入・輸出のほとんどが規制されています。

水銀の毒性

金属水銀、無機水銀化合物、有機水銀化合物

水銀には金属水銀、無機水銀化合物、有機水銀化合物の3つの化学形態があります。このうち、金属水銀については気化した水銀蒸気を吸い込むと肺などが冒されます。しかし、経口摂取であればさほど害はないと言われています。なぜなら金属水銀はほとんど体内に吸収されず、腸管をそのまま通って排泄されるからです。

一方で無機水銀化合物と有機水銀化合物には強い毒性があります。無機水銀化合物に皮膚や粘膜などの生体の表面が触れると細胞がただれてしまうのです。したがって、無機水銀化合物を経口摂取すると消化管や腎臓などが損傷を受けます。

有機水銀化合物の場合は消化管から高い率で吸収され、体内のさまざまなタンパク質の中に紛れ込み、重篤な症状と後遺症を引き起こします。有機水銀化合物による最も有名な公害は水俣病です。

水俣病

水俣病は1956年に熊本県水俣市で発生した公害病で、魚介類に蓄積した有機水銀化合物(メチル水銀化合物)を住民が摂取することにより3,000人以上の被害者が出ました。魚介類に有機水銀化合物が蓄積していた原因は工場排水です。当時水俣市に存在した化学工場が有機水銀化合物の含まれた排水を水俣湾に垂れ流していたのです。その結果汚染が広がり、甚大な被害が生じました。

有機水銀化合物の中毒の症状はほとんどが神経症状です。四肢末端の感覚障害、平衡機能の障害、運動障害などが確認されています。また、母胎を通して胎児が中毒に陥る胎児性水俣病もあります。

日本で実施されている水銀規制

上記のような歴史的経緯もあるため、日本の水道法では水銀が水道水に混入しないように厳格に規制されています。具体的には水道水における水銀の含有量は1リットルあたり0.0005mg以下と規定されています。これ以上の値が検出された場合、水道水として給水はできません。

また、工場などからの排出も規制されています。水質汚濁防止法施行令により工場などからの排水は1リットル当たり0.005 mg以下しか水銀化合物を含んではならないとされています。

他にも水銀汚染防止法により水銀を利用した製品の製造や使用が規制されているので、汚染物質の中ではかなり強く規制されており、水道水への混入はそれほど心配はいらないと思われます。

水銀の除去方法

もし水銀が含まれていた場合、家庭で除去するのは難しいです。よくカルキ抜きなどに使われる煮沸では水銀は除去できません。
水銀を除去できると謳っている浄水器も存在しますが、対応している製品はあまり多くないのが現状です。日本産業規格が定めた家庭用浄水器試験方法の中には水銀は含まれていません。また、浄水器協会が定めている規格基準にも含まれていません。よって、パッケージに除去対象物質として書かれていない製品のほうが多いです。一部、自社試験によって水銀に対応していると謳っている製品があるようです。

まとめ

水銀はかつて大規模な公害病である水俣病を引き起こした有毒な物質です。したがって、複数の条約や法律で使用や輸入・輸出が禁止されており、工場の排水や水道の水質についても法律で規制されています。浄水器については一部の製品が除去対象物質として謳っているようです。

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