ブロモホルムとは?
ブロモホルムとはトリハロメタンの一種である化学物質です。常温では無色透明の液体ですが、屈折率が高い為、光や空気に当たると黄色になるという特徴を有します。クロロホルムと同じような甘い匂いがします。水道法の水質基準のほか、複数の環境関連の法律によって規制されている汚染物質なので注意が必要です。19世紀の後期〜20世紀初頭にかけて百日咳の鎮痛剤として使用されていましたが、現在では使用されなくなっています。
ブロモホルムの毒性
ブロモホルムを含めたトリハロメタンは、ほ乳類が摂取してもすぐに排泄されます。かつては百日咳の薬として使われており、ヒトに対しての毒性については、ほとんど明確な証拠が見つかっていません。しかし、動物実験において発がん性が認められたケースもあります。ラットにブロモホルムを経口投与する実験では、低頻度ではありますが、大腸への発がん性が認められました。
【参考】NTP Toxicology and Carcinogenesis Studies of Tribromomethane (Bromoform) (CAS No. 75-25-2) in F344/N Rats and B6C3F1 Mice (Gavage Studies)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12704434/
国際がん研究機関(IARC)はブロモホルムを「ヒトの発がん性ありとは分類できない」グループへ分類しています。また、アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)はブロモホルムを「
ヒトに対しておそらく発がん性あり」としています。これは動物実験で発がん性が認められる結果が出ているのと、発がん性が疑われている他のトリハロメタン(クロロホルム、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン等)と構造的に似ているためです。ヒトへの影響についてははっきりわかっていませんが、警笛を鳴らしている国際機関もあるため、みだりに摂取するのは避けたほうが良いでしょう。
ブロモホルムと水道水
ブロモホルムは水道水中に含まれている可能性のある物質です。なぜなら、水道水の浄水過程で副産物として生成されるからです。水道水の消毒には塩素が使われます。水道の原水の中に含まれるフミン質と呼ばれる有機物と消毒用の塩素が反応するとブロモホルムを含めた総トリハロメタンが発生することで知られています。したがって、日本の水道法では水質基準を定め、ブロモホルムの濃度も規制しているのです。
日本の水道水質基準ではブロモホルムは1リットル当たり0.09mg以下と規定されています。水道統計によると基準値以上のブロモホルムが検出されるケースはほとんどありませんが、基準値の10%〜80%の量が検出された事例が複数あり、90%以上の量が検出された事例もあります。念のため注意したほうがよいかもしれません。
【参考】ブロモホルム/厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/dl/k25.pdf
ブロモホルムの除去方法
ブロモホルムは家庭でも簡単に除去できます。具体的な方法は沸騰か浄水器です。沸騰で除去する場合は、やかんか鍋に水道水を入れて10分〜30分沸騰させます。沸騰時間が短いと逆にブロモホルムが増える現象が起きますので注意が必要です。これは水温が上昇するとトリハロメタンが増加するという研究結果が根拠となっています。
浄水器で除去する場合は活性炭を利用した浄水カートリッジを使いましょう。パッケージに除去対象物質が書かれているので、それを確認してから利用してください。また、浄水カートリッジの有効期限が切れると浄水能力が落ちますので、有効期限は守りましょう。
まとめ
ブロモホルムはトリハロメタンの一種で、日本の水道基準で規制されている物質です。ヒトに対する害は根拠がはっきりしていませんが、動物実験では発がん性が認められたケースもあります。しかし、日本の水道は安全性が担保されており、ブロモホルムが水質基準を上回って検出されることはほとんどありません。ただ、基準値の10%〜80%程度は検出された事例が複数報告されているので、心配なら沸騰や浄水器で除去したほうが良いでしょう。沸騰や浄水器を通した水は雑菌が湧きやすくなるため、早めに飲みきることをおすすめします。