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バナジウムは健康によい?人体での働きと科学的根拠について解説

更新日 : 2021.12.20

バナジウムとは?

バナジウムとはミネラルの一種です。そんなに珍しい物質ではなく海水や地中などにも含まれています。地中からバナジウムが溶け出した天然水は採水されて「バナジウム天然水」というミネラルウォーターとして売られます。天然水として採水できる場所は限られており、日本では富士山の周辺においてバナジウム天然水が採水できることが知られています。

バナジウムが人体にどのような効能があるか、はっきりとした科学的根拠は見つかっていません。ラットを対象とした実験でバナジウムに血糖値を下げる効果が認められたことはあります。しかし、実験結果に懐疑的な研究者も多数存在し、科学界でも統一的な結論が出ていないようです。このような状況から、バナジウムは今のところ人体に必須のミネラルとは言えないでしょう。

バナジウムは単体では金属に分類され、灰色がかった銀白色の見た目をしています。地中ならほとんどどこにでも存在しますが、アメリカ、ブラジル、ロシア、中国、南アフリカが主な産出国です。主にチタンや鋼と合金にして、工業製品などの材料に使われます。

バナジウムが人体に効く科学的根拠について

バナジウムが人体に効くかどうかは科学的な実験が行われていますが、結果がまちまちで統一的な結論が出ていません。過去には以下のような実験結果が出たことがあります。

肯定的な実験結果

1985年にブリティッシュコロンビア大学のHeyligerのチームが糖尿病のラットに対してバナジウムの化合物(バナジン酸塩)を4週間投与しました。すると、血中のインスリン濃度は低いままなのに血糖値が正常値まで戻りました。

1996年にテンプル大学病院のBodenらのチームが2型糖尿病を発症している成人男女8人に対し、バナジル硫酸塩50mgを4週間経口投与し、さらに4週間プラセボを投与した結果と比較しました。その結果、空腹時血糖値が20%低下するなどの効果が見られました。

否定的な実験結果

2002年に山梨県環境科学研究所の長谷川達也研究員らが糖尿病マウスに対するバナジウムの影響を調べました。富士山周辺から採水されるバナジウム天然水と同じ濃度にしたバナジウム水溶液を糖尿病マウスに対して3ヶ月間経口投与しましたが、血糖値は改善しませんでした。

【参考】
Effect of Vanadate on Elevated Blood Glucose and Depressed Cardiac Performance of Diabetic Rats
https://www.science.org/doi/10.1126/science.3156405?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed

Effects of vanadyl sulfate on carbohydrate and lipid metabolism in patients with non—insulin-dependent diabetes mellitus
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S002604959690013X

バナジウムを含む富士山地下水を用いた糖尿病治療法に関する基礎的研究
https://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-14572121/145721212003kenkyu_seika_hokoku_gaiyo/

バナジウムの欠乏症と過剰摂取について

バナジウムが欠乏したらどうなる?

先述したように、バナジウムの人体への効能がはっきりと判明していないため、摂取基準なども定まっていません。したがって、バナジウムが欠乏したらどうなるかもわかってないと言えます。今のところバナジウムの欠乏で人体に症状が出た報告もないため、栄養バランスの良い健康的な食事をしていれば特に気にする必要はないと考えられます。

バナジウムを過剰摂取したらどうなる?

アメリカの食事摂取基準では成人のバナジウムの摂取量上限は1日あたり1.8mgだそうです。一方で、滋賀県立大学の柴田克己主任研究員の研究によると、日本人の1日のバナジウム摂取量の推定値は27㎍で、これはアメリカが規定している摂取量上限の1.5%に過ぎません。したがって、通常の食生活を贈っている限り、過剰摂取にはならないと考えられます。市販のバナジウム天然水でもバナジウムの含有量は1リットルあたり100㎍程度なので、1日に人間が飲める水の量を考えると特に心配はいらないと考えられます。

【参考】食品および飲料水中のバナジウム濃度と日本人のバナジウム摂取量
http://www.shc.usp.ac.jp/shibata/H19-III-3.pdf

バナジウム天然水の味

富士山麓のバナジウム天然水は味が非常に良いことで知られています。バナジウム天然水は富士山の地面に降った雨や雪が何十年もかけて地中深くまで浸透し、地下水として溜まったものです。この水はほどよいミネラル分を含んだ軟水であり、お茶やコーヒー、料理に使っても美味しいと言われています。先述したように健康に対する効果はまだ未知数ですが、味が美味しいため飲用には適していると言えます。

まとめ:バナジウムの今後の研究に要注目

バナジウムは健康効果が期待されているミネラルですが、まだまだ研究は発展途上ではっきりとは結論が出ていません。しかしながら、味が非常に良いと言われており、料理にも使いやすい軟水なので、愛飲してみるのも良いでしょう。

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