海水とは?海水の塩分濃度はどのぐらい?濃度の違いや飲むことで考えられるリスクを解説

皆さんは海水の塩分濃度がどの程度か、ご存じでしょうか?また、「海水は飲んではいけない」という話は耳にしたことがあるかもしれませんが、その理由を具体的に知っている方は少ないかもしれません。
こちらの記事では、海水の塩分濃度の基本情報から、海水を飲んでしまった場合のリスクについて詳しく解説します。

海水の塩分濃度とは?

はじめに、海水の塩分濃度について、基本的な情報を紹介していきます。
海水にはどのような成分が含まれているのか、確認してみてください。

海水の大部分は塩化ナトリウム

海水に含まれる塩分の主成分は塩化ナトリウム、つまり食塩です。この塩分は、陸地から河川を通じて海に運ばれ、長い年月をかけて海水中に蓄積されてきました。
世界中の海水には、平均して約3.5%の塩分が含まれており、そのほとんどがこの塩化ナトリウムです。

マグネシウム、カルシウム、カリウムなども含まれる

海水には塩化ナトリウム以外にも、マグネシウム、カルシウム、カリウムといったミネラルが含まれています。
これらのミネラルは海洋生物にとっての栄養なので、成長や生態系の維持に欠かせないものです。
たくさんの種類の生物が海の中で暮らせるのも、これらのミネラルを含んでいるからです。

海水の塩分濃度はさまざまな理由で変化する

海水の塩分濃度は、地域の環境や条件によって変動します。
例えば、気温が高く、乾燥している地域では水分が蒸発しやすいので塩分濃度が高くなります。
反対に、降水や河川の流入が多い地域では塩分濃度が低くなりやすいです。また、地球温暖化で北極や南極の氷が溶けてしまうことも、塩分濃度の低下に影響を与えます。
この後、海域ごとの塩分濃度の違いや、どうして違いが出るのかについて詳しく解説していきます。

海域ごとの塩分濃度の違いや理由

続いて、海域ごとの塩分濃度の違いについて、理由も含めて確認してみましょう。

太平洋、大西洋、インド洋の塩分濃度比較

世界の3つの大きな海域である、太平洋・大西洋・インド洋の塩分濃度やその特徴は、以下の通りです。

海洋名塩分濃度の平均特徴
太平洋約3.4%雨が多く、川の水が流れ込みやすい
大西洋約3.6%蒸発が多く、塩分が高めになる
インド洋約3.5%暖かく、塩分濃度は中間程度になる

世界で最も塩分濃度が高いのは紅海やペルシャ湾など

紅海やペルシャ湾は、世界で最も塩分濃度が高い海域のひとつです。これらの地域は非常に暑くて乾燥しており、海水がたくさん蒸発するからです。
そのため、海には多くの塩分が残り、他の海域に比べて塩分濃度が高くなります。
特に紅海では、塩分濃度が他の海の約1.5倍になるときもあるほどです。

日本近海の塩分濃度は場所によって異なる

日本近海の塩分濃度は、季節や場所によって変化します。
まず、日本海と太平洋で塩分濃度が違う上、それぞれ季節によっても変動するのが特徴です。詳しくは、以下の表をご覧ください。

 夏季冬季
日本海3.2〜3.37%3.4〜3.45%
太平洋3.3〜3.45%3.45〜3.5%


表からわかる通り、塩分濃度は太平洋の方が高い傾向があります。
これは、太平洋を流れる黒潮が暖かいことや、日本海のほうが河川からの流入が多いことなどが理由として考えられます。
また、沖縄近海は特に塩分濃度が高いのが特徴です。
このように、日本近海では海流や気候などの影響で、海域によって塩分濃度が異なります。

海水の塩分濃度と生態系の関係性

海水の塩分濃度は、地球上に暮らす生物の生態系とも深く関係しています。詳しく解説するので、確認してみてください。

塩分濃度の変動が生物の分布と生態系に影響を与える

海水の塩分濃度は海洋生物の生息に大きく関係していて、分布にも影響を与えます。
例えば、サンゴ礁に暮らす生物は一定の塩分濃度が必要です。万が一塩分濃度が変動すると他の生物が集まり、元々いた生物は生きづらくなります。
また、地球温暖化で氷が溶けて塩分濃度が薄まると海流や水温が変化し、生態系全体に影響が及びます。
その結果、漁業資源の減少や一部生物種の絶滅、異常気象の発生など広範囲にわたる問題が発生するかもしれません。

生態系への塩分濃度の影響を最小限に抑える取り組みが不可欠

生態系を守るためには、塩分濃度の変動を最小限に抑える努力が必要です。
具体的には、温室効果ガスの排出を抑え、地球温暖化を緩和することが挙げられます。
また、農業や工業などで排出される塩分量を管理したり、川や海への流入量を減らしたりする取り組みも大切です。
これらの取り組みを行うことは、海の生態系を保護し、未来の地球環境を守ることにつながります。

海水を飲んではいけない理由は?

海水は飲んではいけないイメージがある方も多いかもしれませんが、なぜだか知っていますか?ここからは、海水を飲んではいけない詳しい理由を紹介していきます。

塩分を過剰摂取すると体に負担がかかる

海水は非常に塩分濃度が高く、飲むと体内に過剰な塩分が取り込まれます。
体内に大量の塩分が入ると、余分な塩分を尿として体外に排出する必要があるため、腎臓などの臓器が過剰に働くことになり、大きな負担となります。

脱水症状になる恐れも

海水を飲んで多くの塩分が体内に入ることで、体は塩分を薄めようとして多くの水分を必要とします。
その結果体の水分が不足し、脱水症状を引き起こす可能性があるので注意しましょう。
脱水症状は、重篤な場合には意識障害や生命の危険を伴うこともあります。    

海水には有害物質が含まれている

海水には塩分だけでなく、工業廃棄物や農薬、マイクロプラスチックなど、さまざまな有害物質が含まれていることがあります。
これらの有害物質を摂取すると、健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

海水の塩分濃度の違いや体への影響を知ろう

こちらの記事では、海水に含まれる成分や海域による塩分濃度の違い、塩分濃度と生態系との関係性、海水を飲んではいけない理由まで幅広く解説しました。
塩分濃度は海域によって異なり、生態系とも深く関わります。塩分濃度の変化による生態系への影響を抑えられるよう、地球温暖化を防ぐ取り組みをひとりひとりが意識していきましょう。
また、海水を飲むと塩分の過剰摂取や有害物質により、体に影響を及ぼす恐れがあります。海水を飲んでしまうことがないよう、十分に注意してください。

〈参考サイト〉
海洋の塩分|北海道大学のLASBOS
サウジアラビアの海洋生物:紅海の生き物|visit saudi
海流・海水温度・塩分濃度|国土交通省 国土地理院
第3節 海洋プラスチックごみ汚染・生物多様性の損失|環境省
(2024-9-5)

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